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「華」
金司さんはそう呟くと、私を懐へ導いた。
金司さんの大きな手が、しっかりとした腕が私を優しく包み込む。
「‥‥金司さん‥?」
抱きつかれた事に嫌悪感は感じなかった。
「泣きたい時はな、我慢せんでええんや。泣きたい時は好きな分だけ泣けばいいんや」
「‥別に、悲しくなんか‥」
「お前の泣き顔、笑ったりなんてせぇへんから」
人の話を聞きなさいよっ!
そう思ったけれど、言葉が口から出てこなかった。
私、金司さんにこう言われたのは初めて?
「俺の前でだけでは、お前の好きなように感情を出してええ」
違う。
初めてじゃ、ない。
前にも貴方は、私に言ってくれたわよね。
同じ事を。
私は金司さんの顔を見上げた。
姿は違う。
しかもただの人間じゃなくて、吸血鬼。
でも‥‥
「金司さん」
ううん、違う。
彼は‥‥
「‥‥志黄」