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2人は何処か満足のいかない顔で俺を見つめてきた。
「金ちゃんの気持ち、分からなくはないけどさ、華ちゃんは‥‥金ちゃんのどうでもいい前世が、きっと大切だと思うよ?」
「何でや」
「お前、早くに絶ったんだろうが。だったら、この‥何てんだ?今の事」
「現世?」
「そ。それでお前ともう一度、一緒にいたいと思っているんじゃねぇのかよ」
共に過ごした時間で
前世を、踏み台にして。
現世を、再生に。
俺はもう一度考え直した。
本当に、俺は前世なんかどうでもいいんか?
華と出会って直ぐに好きになったのは“前世”の記憶を思い出したからで、もし“前世”がなかったら俺は‥‥
俺は、あんなに早く華を好きになったんか?
‥違う、やろ。
あんなに早く華を好きになる事は、絶対に無かった。
例え最終的に好きになるとしても、絶対に沢山の時間を要せんと、好きになんかなれへんわ。
そう一人落ち着いて考えていた時、葵と紅のケータイがほぼ同時に鳴った。
「‥ああ、成程ね」
「?」
「はぁ!?‥面倒臭ぇ」
「?」
受信したメールをそれぞれ読んで、それぞれ口を動かす。
「なんや、どうかしたんか?」
「ううん、ティータイムがちょっと増えただけ」
「は?」
「まぁ、まだ雨降ってっからいっか」
そんな軽い事を言いながらも、2人の俺に対しての目線が痛くなった。
実に、『お前が悪い事した』みたいな目で見てくる。
「な、何や?」
今送られてきたそのメールに、何か俺の事でも書かれとったん?
てか、怖いんやけど‥。
この痛い目線の理由を知るのは、もう少し経ってからのお話。