other contract
other contract -mark 9- 華目線
大粒の水が、空から勢い良く落ちてくる。
私は、その中を歩く。
傘も差さずにとぼとぼと、力無く。
私‥‥、あの人に愛想つかれてしまったかな。
なんて思いながら頬に感じた雫は、雨だけのモノではなかった。
「何、泣いているのよ‥」
『お前が好きなのは、“俺”じゃない。“志黄”やろ?』
あの時、あの人はそう言った。
そう言った時の彼の顔の方が、
とても悲しそうで、
今にも泣きそうな面。
「あれ?華ちゃん‥っ!?」
バシャバシャと慌てた様子でこっちに向かってくる足音。
不意に感じなくなる雨の感覚。
代わりに感じるのは、雨の音と温かい手。
「すみ、れ‥」
「どうしたの!?傘も差さないでっ!!風邪引い‥‥」
菫は私の顔を覗くと、言葉を無くした。
「‥華、ちゃん‥」
私はきっと、それ程酷い顔をしているのかしら。
菫は黙って、私の手を引いて歩き出した。
どこに行くの?なんて、私は訊かなかった。
そんな事、どうでも良くて。
でもそれは今、上手く頭が回らないせいでもあるのかも。
菫は生徒会室の大きな扉を押そうとした。
途端、私は足を重くする。