other contract
放課後、クラスのある男の子に誰もいない教室へ呼び出された。
どうしたの?と訊くと、その人は私から目を逸らして言った。
好きだ、と。
何を?
そう訊かなくても分かっていた。
その人が私に思いを寄せている事が。
その人はクラスでも評判が良くて、とてもいい子だと皆がみんな言っていた。
もちろん、私もそう思う。
「付き合ってくれないか?」
「‥‥いいよ」
私もその人の事が結構気になっていたから、難なくその人の気持ちを受け入れた。
「えぇ!?付き合ってるのっ!?」
「ちょ、菫、声大きいわよ‥ッ!」
「あ、ゴメン」
同じクラスの菫に、この事を話せば予想通りの反応。
菫はこの前、彼氏が出来たと控えめに報告してきた。
相手が、生徒会長って‥。
生徒会長って凄く持てるんでしょう?
生徒会長狙いの女の子たちの恨み買っちゃうわよ。
そう言おうとしたものの、とっても幸せそうに会長の事を話すものだから、その言葉は何処かへ消えた。
まぁ、菫がいいならそれでいいか。
「で、どうなの?」
「何がどうなのよ」
「相手。もう一緒に帰ったりした?」
「ううん、まだ」
「ぅええ~‥ッ!!まだなの!?」
ボクたちは付き合ってなくても毎日帰ったのにっ!!
と言いながら、何故か菫は頬を膨らませた。
‥‥何であんたが怒ってんのよ‥‥。
「あのね、菫。あんたたちと私たちは違うの」
「だ~け~ど~」
確かに、付き合いだしてから一週間が経とうとしているけど全く何にも進展無し。
別に何かを期待しているわけではないけれど、あの日から今まで放置されてる様な状態。
「まぁ、そのうち一緒に帰ったりするわよ」
そう言って菫に微笑めば、菫も微笑んでくれた。
「それより、いいの?時間的にはもう帰る時間よ。‥ほら」
私は教室の入り口を指差す。
菫は私の指の先を視線で辿った。