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「ぅわぁ!アオちゃん‥っ!!」
「ちょっと、人の顔見て『ぅわぁ!』って酷くない?」
「ご、ゴメン」
「ううん、僕もゴメンね。久しぶりに会った友人との話が結構長引いちゃって。そっちは御話終わった?まだ話すようなら生徒会室で待っとくけど」
すると菫は私に視線を向けてきた。
菫は優しいからね。
会長をとるか、私をとるか、真剣に悩んでいる様子。
「ほら、待たせちゃ駄目よ。話はもう終わってるから、ね?」
そう言うと菫は、パッと向日葵の様な笑顔を私に向けて言った。
「うん。じゃあ、また明日ねっ!!」
菫が会長と教室から出て行ったのを確認して、私も身支度をした。
鞄を持って廊下を歩いていると、視界の中に誰かが入ってきた。
その人は高等部の校舎と大学部の校舎を結ぶ連絡橋にいた。
私は足を止めて、その人に見入った。
初めて見る顔。
‥‥でも、初めてじゃない感じ。
その人をずっと眺めていると‥‥。
「‥‥あ、あら?」
視界から、急に消えた。
‥‥のではなくて‥‥。
「や、やっぱり‥」
止めていた足を慌てて動かして連絡橋に来たら、その人は橋のド真ん中で倒れていた。
その人はここの大学部の生徒みたい。
証拠に、胸ポケットには大学部の学生書が。
小さく呻く声が聞こえたから、死んでない‥
じゃなくてッ、気を失ってない事は直ぐに確認出来た。
「あ、あの‥大丈夫ですか!?」
体を少し起こして問えば、うっすらと開く瞳。
「あ、あぁ‥」
小さく返された返事。
微かに光を反射している黄金の瞳に、ドクンッと心臓が跳ねた。
‥‥なんでかしら。
「と、とにかく救急車を‥‥」
ポケットから携帯を取り出そうとしたら、私よりも一回り以上大きな手にそっと制される。
呼ばんでええ、と。
そう言いながら彼は、私の首に手を掛けた。
「すまん」
それだけ言った彼の顔が視界から消えるのと同時に、鋭い痛みが体を走り抜ける。
ズキン、ズキンと。
目に見えるもの全てがぼやけて、挙句の果てには全てが白の世界に飲み込まれる。
‥‥痛い、死ぬのかな。