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other contract -mark 10- 金司目線




気付けば、華の目には今にも滑り落ちそうな涙が溜まっていた。
膝に置いているタオルをぐっと握りしめて、口を開く。

「ごめんなさい」

俺はどういう意味か分からず、返す返事が見つからんかった。

「困らせたかったんじゃないの。今でもあんたの事、好きなのは本当だから」
「‥‥は、華。俺は‥‥」
「今のあんたを、見て欲しいんでしょう?」

そうや。
例え“前世”で会っていても、俺らが今いる処は“前世”やないから。

「華、ごめんな。俺はお前自体が受け入れられんって事や無いんやで」

ただ、お前に“今”の俺を見て欲しかっただけ。

その為に、まさかお前を泣かせてしまうとは思わんかった。
こんなに、苦しい思いさせるとは思わんかった。
俺、最悪や。

「金司」

これは、“今”の俺の名前。

「華、すまん」

俺は床に頭を付けて華に土下座した。
こんな事しても華を泣かせてしもうた代償は、もっとデカいもんやろう。

「‥何で、金司が謝るの?」
「何でって、お前泣かせるまで事を大きくしてしまったし‥」
「私がいけないのよ。“前世”の事思い出したら、それをいつまでも引きずろうとしてたし」
「いや、でもその記憶があったから、俺らはまたこうやって話せてんのやし」
「でも、今は“前世”じゃないからそんな事もういいわよ」
「何でやっ!“前世”の記憶があるから、俺らまた結ばれんのやろっ!?」
「‥結ばれるの‥っ!?」
「そや、やから“前世”の記憶に感謝せなアカンっ!!」

そう言うと華は顔を赤くして、よくそんな恥ずかしい事いえるわね。と俯いた。
何や?何か恥ずかしい事言うたかいな。
俺は当たり前の事言うたまでやでっ!!
あん時と、矛盾しとるのは自分がよう分かっとるが。

でも、何か華の反応がいまいち‥‥ま、まさか


「‥もしかして、好きな人出来たんかっ!?」
「はぁ!?どういう勘違‥」
「あ゛~、俺があんな事言うたからかぁ‥!!」

せやかて、あん時は“前世”と“今”の事でというか、
華の事で頭ん中ごちゃごちゃなっとって、痛かったんやし‥‥
と一人で舞い上がっていると、飛んできた。



‥‥久しぶりの、愛の鉄拳や。


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