狂愛~狂うほどに君を~
『オレっちとおっさんなら空飛んだ方が早くない?楽だしさぁ!』
『・・・そんな目立つことをしてゆずを危険にさらしたいのか、サル』
千とイアンが二人になればすぐに言い合いが始まってしまう。
普段から口数の多いわけではない千が言い合いをしているのは、ある意味イアンを可愛がっているのかもしれないが。
『お前はゆずの前ではえらく下手に出ているくせに、他には偉そうだな』
『リリィ様は特別だいっ!おっさんとなんか比べもんにならないよ』
『・・・お前、パワーズだろう』
パワーズとは天使の九階級の第六位。
役どころで言えば対悪魔戦闘員。
『だったらなんだよ!なりたくてなったんじゃないんだ、オレっちだって・・』
『俺と泉のことを毛嫌いしているからな・・それにパワーズはお前くらいじゃじゃ馬でなければ務まらないだろう。ああ・・お前はサルか』
対悪魔戦闘員はその名の通り悪魔と接触することが多い。
裏を返せば堕ちやすいのだ、そっち側に。
そのこともありイアンは千と泉に気を許すことは出来ない。
たとえゆずが千と泉のことを大好きだとしても、リリィがそうとは限らないからだ。
記憶を取り戻したとき、リリィに戻ったとき、彼女が出す答えを誰もまだ知らない。