狂愛~狂うほどに君を~
ゆずはスタスタと先を歩いていってしまう千の後ろ姿を必死に追いかける。
そして不安を覚えていた。
少しずつ開いていく距離に。
やだ。
やだ。
いやだ。
そんなにもあっさりと離れていかないで…。
『悪い、速かったか?』
千の声が頭の上から聞こえる。
ゆずが思わず顔をあげるとそこには千の顔があった。
ゆずはいつの間にか千の手を掴んでいたらしい。
『あっ…。ごめんなさいっ。』
ゆずが手を離そうとしたその時、
パシッ
千に手を掴まれた。
『こんな人混みだからな。』
千はゆずの手を優しく握るとまた歩きだした。