狂愛~狂うほどに君を~

高鳴る鼓動に何もかもがついていけず、ゆずの頭の中はごちゃごちゃだった。

けれどそんな中でも一つだけしっかりと分かったことがある。

この人の傍にいたい。

そんな感情が生まれていた。


『あのっ…。』


いつの間にかゆずの口からは声が出ていた。


『どうした?』


千はそのか細い声に一度足をとめて耳をゆずの口へと近づける。


『千さんは…どうしてこんなに良くしてくれるですか?』


ゆずは伏せ目がちに握られた手を少しばかり震わせて問う。


『さあな…。』


その言葉がゆずに突き刺さった。

理由もなく、ただなんとなく良くされていたんだ。

そう思うとやるせない気持ちだった。


『ただ…お前だからかもな。』
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