企画小説

「類くんは、長男だろう?いずれこの組を継ぐことになるんじゃあないのかぃ」

磯島さんの言葉に父は短く「勿論だ」と呟きました。
そうすると、磯島さんは

「そして、将くんはまだ小さい。…そしたら、蓮くんが1番適任じゃないかね?」


私は、この言葉に子供ながら傷付いたのを今でも覚えている。
消去法で選ばれるなんて、なんて嫌がらせなんだと。

父は、横目でその怒りに満ちていた私の口元を捕らえていた。

「…蓮は、譲らん。勿論、類や将もだ」

消去法だったと聞くまでは、今の父の否定の言葉がどれだけ嬉しく感じただろう。
しかし、聞いてしまった今、私はちっとも嬉しくなかった。

だから、帰ろうとしている磯島さんを言葉で引き留めた。


「待ってください」


磯島さん。と続けると磯島さんは暗い顔を私に向けた。


「俺、行きますよ。東苑堂寺に行きます」

「!?」

「!!」


勿論、父は驚き零れんばかりに目を見開きましたが、直ぐに顔付きは怒りを現わにしたものに変わりました。
磯島さんは、その空気を読んだんだか読んでいないのだか、小さく笑みを零しました。


「蓮!!何考えてるんだ」

「蓮くん、ありがとう。では早速準備を…」

「ふざけるな!!」

ニコニコと話をしていた磯島さんの言葉を父が遮った。
それは、鬼と言っても過言ではなかった。


「…蓮、貴様何を考えている?」


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