りんごゆき
バイバイ、私たちの思い出の場所。
忘れないよ。
ありがとう。
商店街の横道の階段の下から、私は秘密基地を見上げ左手をかざした。
空は必要以上に青く澄んでいて。
風が大分涼しかった。
そろそろコートが必要になる頃だった。
秘密基地を覆っていた灰色の幕が外されたのは、それから2年半後だ。
私たちは突如現れた大きい綺麗なビルを見上げた。
そこはもう小高い丘でもなんでもなかった。
そして、私はもうおばさんに会うことはできないんだって気付いたんだ。