LAST contract【吸血鬼物語最終章】

先輩が拝見したい、世界史のノートでしょう。

「お前も、寝てたのか?」
「んなわけないでしょ」

先輩じゃあ、あるまいし。
と口に出して言ったら、どうなるか先が読めていた。
だから、これは仕舞い込んで。

「ていうか、先輩が勉強不足で読めないだけなんじゃ‥‥」

ぐいっとノートを自分の方に向かせ、除いてみれば吃驚仰天。
意味の分からないぐちゃぐちゃした字というか、暗号みたいなものが。

「‥僕、間違えて誰かのノートを持ってきちゃった?」
「馬鹿言え、こりゃ正真正銘お前のだ」

閉じられたノートの表紙には、綺麗な字で書かれた自分の名前。

‥‥これは、本当にヤバいかも。
ノートも取れてないなんて‥、次の考査、大丈夫かな。
早く血を口にしないと‥‥

「こんにちは」
「こんにちは~」

明るい声と共に、桃とスミレが白い息を吐きながら顔を覗かせた。
廊下と生徒会室は、全然温度が違うみたいだ。

「今日は先生たちの出張で早く帰れる~♪」

早く帰宅出来るとご機嫌なスミレ。
でも、そんなスミレの顔も、ぼやけているわけで。
ていうか、5人くらい並んで見えるかも‥。
これは、違う意味で嬉しい。

「今日は生徒会の仕事も無いし、帰ろうか」
「そうだな」

先輩は僕のノートを、自分の鞄の中に突っ込んだ。

「あのさ、何してんの?」
「今日の前の3限分も、授業聞いてねぇから」
「‥‥聞きなよ」

だから留年するんだよ、先輩は。
先輩のくせして同学年になっちゃってるんだから。
次留年したら、僕は先輩をなんて呼べばいいのさ。

「ははっ、怒ってんだろ」
「当然」
「いいじゃねぇか、明日明後日休みなんだしよ」
「‥そういう問題じゃなくて‥」

先輩の授業態度の事で僕たちが話している前で
スミレたちは、何やら笑い合っていた。

良かった。
スミレが笑ってくれてて。
僕の前でも、笑ってくれて。



―――‥ドクン



いつもの、様に‥‥

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