LAST contract【吸血鬼物語最終章】
「‥っ、アオちゃんの、バカァ!!」
そうして、僕はスミレに豪快に叩かれました。
「でも、僕を殴るほど、スミレも僕に溺れてるのか‥」
そう自惚れてみながら扉に手を掛けようとした時、扉が勢い良く開いた。
‥というより、僕に向かってきた。
ゴンッ!!
「っ~‥‥」
今日は、なんて運の悪い日なんだろう。
「ぅおッ!?‥葵、何しゃがみ込んでんだよ」
「‥だ、誰のせいで~」
ズキズキと痛む頭を抱えながら、僕は先輩を睨みつけた。
気をつけて開けてよねっ!
何時何処に誰がいるのか、分からないんだから!!
「大丈夫?」
「うん。僕、今からちょっと出てくるから。桃、書類机の上に置いているから」
「ああ、私が取りに行ったのに‥有難う。あの、さっきスミレとすれ違った時、怒ってたみたいなんだけど‥、何か、あった?」
お、怒ってますか。
「おいおい、喧嘩か?」
「まぁ、そんなところ?」
「いや、こっちが訊いてんだよ」
僕は先輩たちの隣を過ぎて、今度こそ扉に手をかけた。
「もしスミレが戻ってきたら、止めててくれる?」
「アイツが嫌がったら止めねぇぞ」
「了解」
そうして生徒会室から飛び出した僕は、廊下の寒さに身震いをして、辺りをよく見渡した。
スミレが嫌な事があった時、いつも行くところは‥‥
「お気に入りの場所」
でも、こんな寒い日に屋上なんかに行くかな?
と思いながらも、足はそこを目指して進んでいた。
やっぱり、
さっきのは本当に違うから。
と言っていた方が良かったのだろうか。
そう言っていた方が、安心できた?
それとも、逆に僕を疑った?
「スミレ」
こんなに悩むのは、スミレだから。
スミレだから、こんなに悩む。
ははっ、僕、
本当に『スミレ命』になっちゃってるなぁ。