LAST contract【吸血鬼物語最終章】

LAST contract -mark 19- 葵目線




日曜日の今日も、僕は海に来ていた。
2月の下旬は、まだ冬の中。
海から吹いてくる風は冷たくて、結構寒い。
それでも此処に来てしまうのは、何か目に見えない魅力があるからだろうか。
それとも‥‥

「寂しい、からかな‥」

スミレと離れて、周りが静かになった。
それが、何か物足りなくて‥。
音が止む事のない此処なら、それが紛らわせると思ったのだろうか。

1週間、スミレと離れて分かった事がある。
それはスミレが記憶を失っていた時も感じていたけど、
傍にいない方が、とても寂しい。
毎日が意味を持たずに過ぎていっている様で、味気無い。

つまりそれは‥

「限界‥」

っていう事かも。

離れて一週間しか経ってないのに、この有り様。
僕はどれだけスミレ中心だったのか、自分で自分に思い知らされた。
ゆっくり歩いていた足を止めて、その場に腰を下ろす。
ズボンに砂が付くだろうけど、別にいいか。
海と空、決して交わることの無い境界線を眺めて、手元の砂に目をやる。
それは微かな太陽の光をキラキラと反射させて、時々僕の目を突いた。
なんだかこの浜辺の砂は、スミレを思わせる。
いつも笑顔で元気なあの子は、キラキラとして眩しい存在。
傍にいればいる程、頭はスミレの事で支配されて、想わずにはいられなかった。
けれど傍にいなくても、いない分スミレを想ってしまう自分がいて‥。
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