恋人選び―生きるか死ぬか―
「嫌ぁーーー!!」

真理子の叫び声が響く。


「直也…直也ぁーーー!!」

千佳が聞き慣れない名前で
甲斐を呼んだ。



山本が二人に近付く。



あたしはただ見てるだけだった。





「大丈夫。眠っているだけだ。」

山本が言った。


「多分睡眠薬を
入れられていたんだろう。」


「本当に……?」

千佳がすがるように山本を見る。

「あぁ。
それに多分パニックを起こすために
一つの弁当にしか入れていないと思う。」





「その通り。」



あの声がスピーカーから聞こえる。


「山本君、さすがだね。
安心して残りは食べなさい。
こんな簡単に見破られるとはね。
ははははは。」






「食べるか……」

「そうだな。」


千佳は安堵の顔を見せている。


あたしは一つ弁当をとって
千佳の元に向かった。


「あたし、あんまり
お腹空いてないから
これ……分けよう?」

「本当に?ありがとう…」


あたし達は皆固まって
夕食を食べた。

甲斐はすやすや眠っている。



「甲斐と…仲いいの…?」

由紀が聞いた。

皆多分気になっているはずだ。


「あたし…
直也とは幼なじみだったんだけど
中2の時に直也が引越して
会えなくなったの……
それで高校に行ったら
直也がいて……
でも昔とはもう違ってた。
だからあたしもう話すことも…」


千佳はそれっきり俯いたままだった。



皆多分、分かっただろう。








千佳は甲斐が好きだ。
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