恋人選び―生きるか死ぬか―
「夏美…トイレいかない?」
由紀があたしに話し掛ける。
「あ…うん。」
由紀は何も言わずに先に行ってしまった。
ガチャ
トイレのドアを開けると
由紀が立っていた。
「どうしたの?」
あたしは由紀に近付いた。
「夏美……あたし……」
由紀はそう言って泣き崩れた。
「ちょ…由紀何?どうしたの?!」
初めて見る由紀の涙に
戸惑いを隠せなかった。
「あたし…甲斐が好きなの…
この機会に伝えようって思ったけど
もう無理だよね…」
衝撃的な話だった。
「でも…甲斐は好きじゃないかもよ?!ね?」
あたしはこれが必死のフォローだった。
「好きじゃない女に…
お前は生きろって本気で
命を捨てるマネなんかする?!」
何も言えなかった。
「一週間のうちに
新しい好きな人を作るなんて無理!!
あたし死んじゃうよ!!」
あたしの大切な友達。
幸せを願うのは当たり前だった。
いつもならあたしは多分
「由紀なら大丈夫。」
「頑張ってGETしちゃいなよ!」
って言えたはずだった。
でも今は何も言えない。
誰かが幸せになれば
誰かが不幸になる。
それは恋する中で
いつも言えることだけど
今、その不幸の先は
死、だ。