夢のつづき。
インコは死んでいた。


野良猫の歯の痕がくっきりと残り血がにじんでいた。


一目でインコの小さい命が尽きたのは奈津子にも明白だった。


奈津子は悲しみよりも恐怖が先にきた。


奈津子が初めて目にする「死」への恐怖。


ほんの数分まで生きていたインコ。


いつも鳥かごで飛び回っている可愛いインコが、夏の暑い日差しが照りつけるアスファルトに無造作に横たわっている。


奈津子の手からエサを食べてくれるインコと、目の前の傷だらけのインコが同じとは信じられなかった。


奈津子は両手でインコを抱き上げた。


インコはぴくりとも動かないのに温かさが両手に伝わってきた。


それは、いつもと変わらない温かさだった。


その温かさで奈津子は初めて悲しみがきた。


奈津子は初めて「死」の悲しみを知った。


奈津子は両手にインコを乗せたまま家まで歩き、玄関を開けて家の中に入った。


そして、玄関のドアが閉まる音を聞いて安心したのかその場に座り込んで大声で泣き始めた。


奈津子の家中に響く大きな泣き声にビックリした母親が駆けつけてきた。



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