夢のつづき。
奈津子がさなを説得するために言った「夢の中が楽しかったから、くまちゃんは夢の中でさなを待っているんだよ」というのを信じたのか信じなかったのか奈津子には定かではなかった。


時々、さなはくまちゃんの定位置だった子ども用の椅子の前でぼんやりとしている姿を何度か見かけた。


しかし、泣いてはいないようだった。


さなはさななりに色々と考え、自分を納得させようと小さい体でぐるぐると頑張っているようだった。


その健気な姿に奈津子は胸が締め付けられる思いだった。


奈津子はさなに新しいくまちゃんを買ってあげようかとも考えた。


しかし、それでさなは納得するだろうか?


さなは喜んでくれるだろうか?


新しいくまちゃんを、消えたくまちゃんと同じくらい大好きになるだろうか?


時に、大人は子どもの心を無視して大人の尺度を押しつけて満足する。


そんな大人の身勝手な尺度の押しつけに奈津子自身覚えがあった。


あれは奈津子が小学校3年生の頃だった。


奈津子が飼っていたインコが近所の野良猫に殺された。


それは、夏休みの汗がにじむような暑い昼下がりに奈津子の目の前で起こった。


縁側の屋根の縁に下げられている鳥かご。


野良猫は屋根づたいに音もなく近づき器用に鳥かごが下げてあった金具から鳥かごをはずし地面に落とした。


そして、あっという間にインコを鋭い歯がならぶ口でくわえて連れ去ったのだ。


突然の出来事に驚きながらも奈津子は野良猫を追って走った。


夏の日差しがやけに暑かったのだけは鮮明に覚えている。


奈津子は少し走っただけで頭がくらくらした。


しかし、1分も追いかける事なく奈津子の足は止まった。


何を思ったのか野良猫はインコを口から離し、置き去りにしてどこかに去って行った。


奈津子は恐る恐るインコに近づいた。



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