夢のつづき。
その夜、「くまちゃん、いなくなったの!!」と泣きながら訴えるさなに帰宅した康は「そうか。」とだけ言った。


さなは康の冷たい対応に驚いたようで、火が点いたように泣きだした。


奈津子は慌てて「さーちゃん、パパはお仕事で疲れてるみたいだから向こうにいこうね?」とさなの部屋に連れて行った。


奈津子は康の態度に苛立ちを覚えた。


康はさなが可愛くないのだろうか?


そう思わずにはいられなかった。


くまちゃんが消えて数日が経過した。


その間、さなは泣きながらくまちゃんを探し続けた。


ある朝、さなの様子を見かねた奈津子は康を送り出してからさなとゆっくり話をした。


「くまちゃん、さーちゃんの夢の中に行ったんじゃないのかな?」


さなは不思議そうな顔で奈津子の瞳をのぞきこむ。


「くまちゃんがいなくなったとき、さーちゃんはくまちゃんと一緒に遊園地に行った夢を見たよね?」と奈津子が言うとさなは大きく頷いた。


「くまちゃんね、さーちゃんと一緒にお出掛けができてすごく楽しかったとママは思うの。さーちゃんもくまちゃんと一緒で楽しかったよね?」


さなは大きく頷く。


「くまちゃんもさーちゃんと一緒で、すごく楽しかったんだとママは思うの。だから、くまちゃんは楽しかった夢の中から帰って来ないんだと思うの。」


さなの目から涙がこぼれる。


「きっと、くまちゃんはさーちゃんの夢の中の遊園地でさーちゃんが来るのをずっと待ってると思うよ。」


さなは涙を流しながら「さなの夢の中にくまちゃんはいるの?」と言った。


奈津子は優しく頷いてさなの頭をなでた。


さなは声を出さずに大粒の涙だけポロポロと流した。


納得したのかさなはそれ以来、くまちゃんを探す事はしなかった。



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