いとしいひと


「はい…」


『朱里ちゃん?
今、どこ…っ!?』


何処って…

橋口さんは走ってたのか、すごく慌ててるようで…


「橋口さんの…お家です」


『えっ!?うち!?』


なんで!?って感じで


…そりゃそうだよね。


『待ってて!!!』


そう言うと切れてしまった。



………。



「待ってろって?」


「はい…」


おばさん、なんだか楽しそう?


あたしはお店で待たせてもらう事に。


……どうしよう。


勢いでここまで来たけど。


いざ逢えるとなると、ものすごく緊張して。


……伝えるんでしょ?


あたしの…気持ち。



「朱里ちゃんの髪、本当に綺麗ね」


おばさんが紅茶を出してくれた。


「あ、すみません」


「直志があんなに真剣に練習するなんて思わなかったわ。
朱里ちゃんの為だったのね」


あたしの…?


「それは…この髪があったから…」


“あたし”じゃなくて…


「馬鹿ねぇ。
“朱里ちゃん”だからよ」


そう言って、おばさんはあたしの髪を撫でてくれた。


あたしだから………?








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