群青の月 〜『Azurite』take00〜
新宿Jemuは
ここから15分位で、比較的近い
ただ曲がり角が多いから
裏道を知らないと、かなり迷う
今日はカッパを連れているし
普通に駅の前から
大きなデパート通りを歩いて行く
カッパには
ワンピースはクリーニングすると言って
ジーンズと、俺のシャツを渡して着せた
肘近くまで捲ったその手を掴んで
右にベースを担いで歩く
ファーストフードの店の看板に
今年はレモン系のデザートが並んでいた
「 帰りに食うか 」
「 うん 」
「 一個な 腹壊すから 」
「 えーー 」
「 …悪党みたいな顔しないの
今、一個買うか? 」
「 うん!! 」
自動ドアが開くと
涼しい空気と、
カウンターから店員の"いらっしゃいませ"
どこかで花火大会でもやるのか
イベント無料とかなのか
浴衣を着ているカップルが多い
カッパはメニューから
「 これ下さい 」と指差し
見てみると普通のソフトクリームだった
「 …これでいいの? 」
「 うん 」
サンデーとか色々あるのに…
けれど、外に出てすぐ気がついた
手を繋ぐと、カッパが嬉しそうに笑い
俺もそんな奴が可愛くて仕方なかった
――― この時、
このまま二人、帰っていれば
随分何か、変わったのだろうか