群青の月 〜『Azurite』take00〜
酒屋の角を曲がると
新宿Jemuの看板
もう随分、人が列んでいる
―― いきなりカッパが、足を止めた
止めたと言うより
拒否反応の様な、激しいもの
「 …カッパ? 」
俺はライヴハウスと同じビル
二階や三階へ向かう階段に
カッパを連れて行った
廊下を真っ直ぐ行けばトイレ
その裏手には非常階段
…あそこが1番、人が少ないか
―― カッパから
ドクンドクンと音がしてる
階段に座らせた
何か飲ませたいがここを離れたくない
目が灰色になっていて
どこも見ていない
脂汗が流れている
さっきのファーストフードで
何か俺も買ってくればよかった
「 カッパ 聞こえるか 」
耳元に、声を近づけても
カッパは無表情に「うん」とだけ
反射みたいな物で、
本当に、聞いているかはわからない
その時鼻歌と、犬の声
驚いて振り向くと、お婆さん?が
薄闇に、マルチーズを抱いて立っていた
手編み風のピンクのベスト
派手な化粧が近付いてくる
「 ―……あら?
どなたか、具合悪いの?
…冷たぁいお水でも
持ってきましょうか? 」
――― 声は、男の人だった
「 すみません
お願い、出来ますか 」
「 ううん 少し待っててね
今ね、ちょうど…
――― あらやだ!!ちょっと!!
もしかして、"あずる"じゃないの?!
何で…
いいわ!とにかく上がって頂戴
背高ノッポさんもよ!! 」
―――― "あずる"…?