群青の月 〜『Azurite』take00〜




『彼女』に誘われ入った部屋は
入口の小ささの予想を外れ
かなり、広かった


きちんと架けられた、何枚ものドレスと
三面鏡の上は、カラフルな瓶で
埋め尽くされている


カッパは、ドアを閉めた音で
意識を帰した





「 あずる!! 」



驚いた事に
『彼女』は思い切り
カッパを平手打ちにした




そして、涙声



「 ……どこ行ってたの…
店の皆、
ほんっとうに心配したんだよ?! 」




「 オミヨ、さん……? 」




『オミヨさん』はカッパを抱きしめ
足元のマルチーズは尻尾を振って
カッパの足に、
嬉しそう飛び掛かっている



「 …こいつ、ここに居たんですか 」



オミヨさんは涙を拭きながら
それに答えてくれた


「 ウチの店で、働いてくれてたのよ
今年の頭、冬ね
基本女の子は取らないんだけど
ひょろひょろで、どっちか解んないし
何か心配なのもあって
来てもらう事にしたのよ

明るいし、ヘンなコだから
皆に可愛がられてね

それが突然居なくなって

…彼氏と喧嘩したのかしらって
皆で言ってたんだけど

…貴方が今は、 "あずる" の彼氏なの? 」



「 いえ
俺は、家出してた所を保護した形で 」


「 …そう
このコが働いてた時期は、
たまに迎えに来てたりしてたんだけどね…

途中からは、
…お金の無心の電話は来てたけど 」



「 …居なくなってから、その人は
オミヨさんのお店には 」


「 いいえ 一度も 」


「 ……… 」



オミヨさんは三つ指ついて
俺に頭を下げた


「 ……このコを助けてくれて
本当にありがとう
もう、どこかで
死んじゃってるんじゃって… 」


「 …知人にも
同じ事を言われました 」


「 おじいさんかしら 」


「 はい 」



オミヨさんは『やあねもう!』と
軽く殴って来たが、結構いいパンチだ






「 …嫌われたから、仕方ないよ 」


「 カッパ 」







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