【長編】Love Step~冷血生徒会長×天然娘の恋愛初心者ステップアップストーリー~
あいつは本当は寂しいくせに、それを認めたくなくて自分を殻の中に閉じ込めている。

龍也の胸の中に抱えている闇をオレは動物の本能で嗅ぎ取っていたから、あいつと暮らし始めて一ヶ月もするとそれはすぐにわかった。。

龍也はきっと本質的には優しい奴なんだ。

だけど、それを表現する事が上手く出来ない。

そう思ったらなんだか龍也が可愛く思えてきた。


こいつは思ったよりいい奴かもしれないと思ったオレは、独り暮らしをしている龍也を見捨てて置けず同居してやる事を決意したんだ。

猫って言うのは薄情だって言われたりするけどそんなことは無い。

死にそうになったオレを拾って、ミルクを与え育ててくれたんだ。恩返しくらいはしなくちゃいけねぇだろ?オレは義理堅いんだよ。

龍也は自分がオレの主人だと思っているらしいが、オレは飼われているつもりなんてさらさら無い。むしろオレはあいつの行く末を心配する保護者みたいな気分でいたりする。

だってさ、考えても見ろよ。

あんな不器用な奴、心配で放って置けないぜ?

龍也は人前では自分を崩さない。

いつだってポーカーフェイスで自分の領域に人を踏み込めないようにしているんだ。

頭もいいしスポーツも出来て顔もなかなか今風のイケメンだ。(俺だってこのくらいの言葉は知ってるんだ)

だけど人間性に欠ける部分がある。

心の奥底で憎しみとか怒りとかが渦巻いていて、何かを無条件で信じる事を恐れている。

このオレにでさえだ。

いつかオレが突然いなくなるんじゃないかと龍也が不安を抱いているのをオレはちゃんと知っている。
仮にも自分がオレの主人だと思っているなら何を恐れる事があるっていうんだ?

まあ、奴が主人だ何て言うと少々むかついたりもするんだけど、そこはオレが100歩譲って大人になってやる。

おまえが人間らしい奴になって、もう少しオレに感謝する日までは傍にいてやるよ。心配すんなって。

そう思っていたんだ…。

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