初恋~俺が幸せにしてみせる~
俺は研修医だろ

まだまだ勉強する事が
たくさんあるんだ

女に気を取られてる
場合じゃないだろ

自分に言い聞かせる度に複雑な気持ちになる

今日もまた患者が
旅立っていった

予告した余命より
短い命だった

人が人を失った

泣きながらも俺たちに
ありがとうと言う遺族

ありがとうなんて
言われる筋合いはない

そのありがとうが
胸を痛めた

俺は落ち込む気持ちを
引きずったまま
麻美が居る花屋へ
向かっていた

俺の姿を見付けて
笑顔を向けた麻美に
何でもいいから
花を一輪欲しいと呟いた

麻美は状況を悟り
笑顔を曇らせた

そして言葉少なめに
俺に花を差し出した

『夕方、家に行くね』

俺は頷くだけだった
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