初恋~俺が幸せにしてみせる~
☆★31★☆
病院へ向かう俺の足は
とても重かった

俺が生きている意味を
見つけ出せるのは
今は病院で『先生』と
呼ばれる時だけだった

こんな蛻の殻のような
俺が人の命を救うんだ

世の中終わってる

医者になったのは
間違いだったんじゃ
ないだろうか

俺に人の命を救う
資格なんてあるのか

だけど今はそれしかない

それでしか生きてる
価値がわからない

救えなかった命を
看取る瞬間

老衰と言える人の死

俺の命と取り替えて
あげたいと思った

今は俺の命なんて
大事ではない

本気で俺が麻美の借金を返していかなきゃ
いけないんだろうか

はっきり言って
恐怖だった

全額を一気に支払う
なんて事は出来ない

情けない自分

どうすればいいんだ…

考えたくない

でも逃げる事は出来ない

命が消えたのに
俺の足は花屋へは
向かなかった

あそこへ行っても
麻美はいないから

麻美を思い出す
だけだから

真っ直ぐ家へ向かう

たぶん俺の顔は
真っ青だろう

コンビニ弁当を片手に
家路を急いでいた

真っ暗な道を
青ざめた顔で歩いた

家の前まで来て、また
顔から血の気が挽ける
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