初恋~俺が幸せにしてみせる~
『次の病院が決まった』

その言葉を理解するのに10秒ほどかかった

院長が俺の働き先を
探してくれていた

驚いた

病院は俺の実家から
少し離れた総合病院

もちろん名前は
聞いた事があった

『今は医師不足とかで
すぐに受け入れて
くれるそうだよ』

にこやかに話す院長は
まるで孫を見つめる
おじいちゃんのような
顔だった

『藤田くんを手放すのはこちらにはとても
痛手だったんだが…』

お礼を言う事しか
俺には出来なかった

こんな俺の為に…
と思うと、胸が熱い

それから1ヶ月で
書類の整理やら
引き継ぎ業務を全て
終わらせた

次の病院からの
資料にも目を通し
すでに働く日も
決まっていた

その病院の名前と
住所を聞いた時
千穂の顔が思い浮かんだ

千穂が住んでいた街

まだ住んでるのか?

もう結婚して
出てってるのか?

懐かしい思いが
どんどん込み上げる

千穂…

何度も胸の中で呼ぶ

会いたいような
会いたくないような

色んな思いが交錯する

忘れよう

もうそんな事

今日は送別会だ

頭の中を綺麗にして
居酒屋へと向かった
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