初恋~俺が幸せにしてみせる~
俺は千穂の手を取る前に音楽が止まらないのを
願ながら踊っていた

俺の願いは叶って
千穂の手を取った

暖かい千穂の手は
少しだけ震えていた

そして俺の心臓は
ものすごく震えていた

触れたかったその手が
今ここにあった

間近で見る千穂は
昔とは全然違った

綺麗だった

俺には輝いて見えた

『久しぶりだね』

俺は勇気を出して
小声で話しかけた

『うん』

千穂は優しく微笑んだ

ぬくもりが伝わってくるその手を離したくない

それでも無情に
終わりはやってくる

俺はこのまま終わるのは嫌だと思った

『後でゆっくり
話さない?』

感情のまま、言葉を
発していた

千穂の足が少し
もつれていた

俺は千穂が
倒れないように腕に
力を入れた

『うん。部屋に
行ってもいい?』

俺は嬉しくなって

『もちろん』

と答えた

それからすぐに
音楽が鳴り止んだ

俺は千穂に微笑んだ

千穂も優しく
微笑み返してくれた

俺の心臓は鼓動を
早めていた
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