囚われのアゲハ蝶
「髪切ったのね、似合うわ~」

ほわんほわんと優しい口調で、可愛らしく頬に手をあてて喋る薫さん。
おかげで雰囲気が少し和やかになった。

「えっ、あっハイ、私の酷い髪を見て李音様が連れて行ってくださったんです」

「あら、李音様が?」

一瞬驚いたような顔をしたけど薫さんはクスクスと笑い始めた。
私は何で薫さんが笑っているのか理解できなかった。

「えーと、私何かおかしなこといいました?」

「いえ、李音様は揚羽さんのことを気に入ってるんですね」

「……それはありえないです」

苦笑いを浮かべながらきっぱりはっきり否定する。
そしてもう男の人はこりごりと今度は心の中で呟いた。
そんな会話をしながら広い屋敷の中を歩き回ってやっと食堂に着いたかと思うと目が回るような忙しさが始まった。
広い大きなテーブルに白い純白のレースのテーブルカバーをかけてから純銀のスプーン、フォーク、ナイフを置いてそして本当に一人分?という疑問が付くくらいの大量のお料理を運び出す。
そしてしまいに李音様からの呼び出しもくらった。
こまねずみのように忙しく屋敷中を駆け回っているといつのまにかヘロヘロになっていた。

「お…お呼びで…しょ……うか」

息を切らしながら李音様の元へと駆け込み、力尽きて部屋の前でへなへなと座り込む。

「遅い、お前はいつになったら時間通り来るんだ」

「…すみ…ません……」

まだ息を切らしている私を見て李音様は一つ溜息を洩らした。
私が完全に息を整えるには少し時間がかかった。

「ほれ」

息をようやく整え終えると、いきなりポイッと細長い四角い箱を投げ渡される。
わけがわからず首をかしげてみせると

「朝渡そうと思っていた奴だ、開けてみろ」

そう言われたのでパコッと気持ちのいい音をたて開いた箱の中には
猫につけるような鈴がついた赤い首輪が入っていた。
鈴の横に『AGEHA』と言うロゴとアゲハ蝶の刺繍が入っていた。

「お前のだ、お前用の首輪」

―ズキンッ

李音様の言葉が心に突き刺さる。
言われるがまま猫のような首輪をつける。

―チリンッ

部屋に首輪についた鈴の音が響く。
ブルブルと握っていた拳が怒りで震えた。
こんな侮辱を受けるのは初めてだった。
まるで私を人間として思ってくれていないようなこんな侮辱は……!
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