囚われのアゲハ蝶
第一章 失ったもう1枚の羽

過去の鎖と絶望

まずは自己紹介からまいりましょう、私は暁揚羽。

このお屋敷に勤めるメイドです。

ですが私はそこら辺にいるごく普通のメイドではありません。

ていっても今時メイドがいること事態珍しいですよね。

この次世代にメイドを雇う余裕があるなんてよほどの金持ちくらいでしょう。

私はこのお屋敷に住む桜乃宮財閥の息子、桜乃宮李音様に一千万円で買われた身。

よくいえば私は一生安定した暮らしを手に入れたと考えられるし、

悪くいえば私は李音様の人形と成り下がったので

私自身の自由が奪われたという事だ。

今の私は例えるなら檻にいれられた飛べない蝶。

身動き1つとれず、ただひたすら息を殺して過ごす毎日。

でも私はこんな毎日を窮屈だとは感じない。

つまらない日常だなんて思わない。

だって…ここは私が唯一居てもいい居場所なのだから…


此処に来たすべての始まりは三週間前のあの日、あの時。


思い出したくもない過去だけれども、

その辛い現実を受け止めて私は今此処にいる。

三週間前のあの日、私には付き合っていた彼氏がいた。

私は男性と付き合った経験なんて人並み以下で初めて出来た彼氏というのが

拓也という男だった。

だからこそあの頃の私は拓也という存在がすべてで、

何をしてでも失いたくなかった。

でもあの日、私は拓也にいきなり呼びだされて

「一千万円の借金?」

いきなり呼び出されたかと思ったら、

すぐさま莫大な借金があるとの話を持ちかけられさすがの私も目を丸くした。

確かに拓也の醸し出すいつもとは違う雰囲気を肌で感じていたが

まさかいきなりこんな話が飛び出てくるとは予想もしていなかった。

拓也はいつもの明るく優しい雰囲気を出さず、ひたすら俯いて話を続けるばかり。

「あぁ…親父が…死んだ親父が残していった借金なんだ、
明日中に返さないと大変なんだよ!!
なぁ、頼む!助けてくれッ…俺を…助けてくれよ…ッ!!」

そう泣きながらすがりついてくる拓也を私は放っておけなかった。

私はただただ単純に拓也の力になってあげたいと思った。

助けてあげたいと思った。

でもそんなこといったって私にだってそんな大金あるわけがない。

私はひたすらお金を借りれるところがないか探し歩いたのだが

当然そんな大金をポンと快く貸してくれる所なんてあるわけがなかった。

そんな時、私を買ってくださるという方が現れました。

それが今のご主人様の桜乃宮李音様。
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