女子高生はオオカミ男。
再会は曇り空の下で
あれから一週間。

私は何の音沙汰もなく平穏に過ごしている。

悠や凪に会えないのが心残りだけど、あの狼に会うぐらいなら一人のほうがマシだ。

入学式から一週間たった今でも私には友達ができないでいる。

まあ、高校からは珍しいんだろう。噂に聞いてみればここ数年前例はないらしい。でも

それも当たり前だと思う。

ここは高校から偏差値がぐんと、ええそれはぐーんと上がるのだ。
 
最低でも75の偏差値。

定員は、一人。

満点がいなければ合格者、0人。

狭き門にしても限度というものをわきまえて欲しいとつくづく思う。

おかげでこっちは孤立しきっている。

誰だ、こんなはた迷惑な制度作ったやつは。

せめて二人は入学させろよ。

二人分の部屋で一人しかいないのってすっごく寂しいんですけど。

受験の規定をろくに読まないで志望校を決めた私も私だけどさ。
 
なんてお得意の愚痴を心の中で呟いていると、担任が教室に入ってきた。

にっくき笹岡。

「あー、HRこれから始めるぞー」

相も変わらず『ー』が多いな。

なんか間延びして聞こえる。

ついでにいつもより間抜け面だ。

これ以上中年男の顔なんて凝視したくもないので、ふいっと窓に目をやる。

あ、なんか雨降りそうだなぁ。

かさ持って来てないし。

別に寮はすぐそこだからたいしたことないんだけど曇り空は基本、嫌いだ。

中途半端だし。

灰色だし。

灰色ということはヤツの目と同じ色だし。

ヤツの目と同じ色ということはヤツを連想させるし。

ヤツを連想させるということはヤツと会ったときの出来事が思い浮かぶし。

ヤツと会ったときの出来事とはヤツがキスしてきたということだし。

ヤツがキスしてきたということは唇にその感触がまだ残っているということで。

だから、嫌いだ。

というか、何なんだこれ。

三段論法ならぬ七段論法だ。

特にこんなに細かく分けることもなかったんだけど。

まあ、いいか。

私が思考を放棄したところで、クラスから歓声が上がった。



< 10 / 26 >

この作品をシェア

pagetop