討竜の剣
汚竜討伐。

噂は程なくしてドーラ全域に伝わった。

汚竜を恐れて別の街へと避難していた者達も少しずつ戻ってきて、街は活気を取り戻し始める。

ドーラの人間達は、汚竜を仕留めたのがファイアルの、しかも年端もいかない少年狩猟者だと知り、皆一様に驚きを隠せなかった。

かつては戦すらしたほどの因縁の民族、ファイアル。

勿論今でも遺恨はあるのだろう。

だけど彼らは躊躇う事なく、俺に礼の言葉を口にしてくれた。

「ドーラを救ってくれて有り難う」

「汚竜を倒してくれて有り難う」

そこに人種とか思想の違いなどは関係なく、ただ素直に喜びと感謝だけがあった。

無口で頑固といわれるドーラ人。

だけどこの時ばかりは街を挙げてのお祭り騒ぎとなった。

その姿を見ていて思う。

どんな神を崇めようと、どんな文化を持っていようと。

みんな根本は同じなんだ。

ファイアルもドーラも。

きっとフーガもアイスラもライストも。

つまらないしがらみに囚われているだけで、余計なものを捨て去ってしまえば、みんな仲良くなれるんだ。

汚竜は環境破壊への戒めとして現れたような魔物だったけど、最後の最後に、いい置き土産を残していってくれた。

俺はそんな風に感じていた。

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