討竜の剣
断末魔の声と共に竜が倒れる。

ドーラを脅かし、ナハトの故郷を壊滅させ、暴虐の限りを尽くしていた竜は、同じ竜の力によって葬り去られたのである。

「っ……」

俺は剣を杖代わりにして、片膝をつく。

遂に倒した。

ドーラさえもを…一国をも傾かせようとした竜を、討伐する事に成功したのだ。

極限まですり減らした精神と体力の限界。

もう立っている事さえ出来なかった。

「アキラっ」

ナハトが駆け寄ってくる。

俺はそれを片手で制した。

「大丈夫…大丈夫だから…」

如何に疲れ果てているとはいえ、ファイアルの狩猟者が一人で歩く事もできずに女の手を借りるというのは少々かっこ悪い。

何とか立ち上がろうとするが。

「お…」

やはり足元がおぼつかない。

俺は大きくよろめいて。

「!」

結局ナハトの肩を借りる事になってしまった。

「…アキラはファイアル人…なのにドーラを守る為に…汚竜を討伐してくれた」

肩を貸したまま、ナハトが言う。

「だったら…このくらいは私にも手伝わせて…ドーラ人として…格好がつかない…」

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