討竜の剣
火の玉の異名をとる俺が。

どんな巨大な魔物にでも勇敢に立ち向かうといわれる俺が。

刃竜の前では竦み上がってしまっている。

ガチガチと音がする。

気がつけば、歯を鳴らしてしまっていた。

勇気とか経験とか、そういう問題じゃない。

本能的に、この魔物に恐れをなしてしまっていた。

そんな俺の目の前で、刃竜はゆっくりと頭をこちらに向ける。

やばい…目が合った。

荒い息を吐きながら、刃竜が俺達を見る。

こうなってしまうと最悪だ。

動けば攻撃される。

仕留めるなんてとんでもない。

今は刃竜を刺激せずに、この場を逃げるしかない。

だというのに。

「アキラ」

どこまで恐れ知らずなのか。

ナハトは自動二輪を降りた。

「私が気を引く…逃げて」

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