討竜の剣
素材は確保できた。

もうこの森に用はない。

「さあナハト、街へ戻ろう」

「うん」

俺達は森の外へと歩き始める。

と。

「そこまでだ」

突然の声。

気がつくと、俺達は数人の男達に囲まれていた。

値の張りそうな銀色の甲冑に身を包んだ槍兵達。

その槍兵を率いるのは、仕立ての良い藍色の衣服に身を包んだ青年だった。

…ファイアルに住む者なら、この青年を知らない者はいない。

クラーゼ・ハインベルト。

ファイアル帝国に屋敷を構える名門貴族の長男だった。

「貴様ここで何をしている。言ってみろ」

見下した物言いで俺達に迫るクラーゼ。

「何って…見ればわかるだろう。狩りをして獲物から…」

「貴様には聞いていない」

俺の言葉にかぶせてクラーゼが言った。

「私が聞いているのはお前…土の女にだ」

< 63 / 159 >

この作品をシェア

pagetop