討竜の剣
話がそれた。

「で」

口の中で咀嚼した肉を飲み下し、俺はナハトの顔を見る。

「ドーラのナハトさんとやらが、俺に何か用かい?」

「……」

しばしの沈黙の後。

「貴方に倒して欲しい魔物がいる」

相変わらずの抑揚のない声で、ナハトは硝子玉のような瞳を俺に向けた。

…俺は怪訝な表情を浮かべる。

神話の時代から、この世界には魔物が存在している。

魔王に生み出された悪しき生命。

しかし四英雄の戦い、そして六英雄の時代の戦い…いわゆる『千年戦争』を経て、魔物が生息するのは、俺達火の民が住むファイアル地域が主となった。

狩猟民族である火の民は、それが都合が良くてこのファイアルに住み着いた。

そしてナハトの住むドーラ地域には魔物は殆ど生息していない。

つまりナハトの依頼は、少々首を傾げるものなのだ。



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