クライシス
「ミスター市橋。君に大変申し訳無い話しをしなければ成らない」
 ツダは小さく呟く。雄介は理解した。
 二谷から聞いていた。普通、諜報員は絶対に身分を明かさない。もし、明かすとすれば、相手が死ぬ時。雄介は身構えた。
「大丈夫。君を殺したりはしない」
 ツダは雄介に優しく語りかける。雄介は少しホッとした。だが、ツダは哀しそうに呟く。
「ミスター市橋。君を私達の飛行機には乗せる事が出来ない」
 雄介はツダの顔を見入った。
「申し訳ない。これは決定事項なんだ」
 その瞬間に、雄介は目の前がチカチカと光る。
「そして、日本政府もそれに変わる手段を講じていない。つまり君は――」
「置いてけぼり……そう言う事ですね?」
 雄介が下を向いて言った。ツダは頷く。雄介は溜息をついた。
 まあ、少しは頭の片隅にあった。アメリカが本当に自分達を救ってくれるのか、心配していた。
 だが、実際にそう言われると、雄介は笑うしか無かった。
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