クライシス
雄介が降りたのは小さなホテルであった。いや、ホテルと言うよりただの酒場の様な場所だ。だが、看板にホテルと出ているのでホテルなのだろう。
 雄介は促されるままに入る。フロントと言うより小さなレジが置いてるだけのカウンターの前を過ぎると階段があった。
 前に行く保衛員が階段を降りていく。階段を下りた所にドアがあった。保衛員はドアの前で立つと「入れ」と言う。中に入ったのは、雄介と一人の保衛員だけだった。
 中は薄暗い部屋で広いだけの何も無い部屋だ。
 雄介がボーッと立っていると奥から一人の男が現れた。
 その瞬間、息を飲んだ。その男を見た事がある。北朝鮮に来る前に、北朝鮮のテレビを見ながら、朝鮮語を勉強していた時に見た。
 相手は、北朝鮮労働党中央委員会の副委員長の……チェ・イルソンだ……!
 雄介は身構えた。やはり、コイツが黒幕だったか。雄介は深呼吸をしてチェを睨む様に見つめていた。



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