クライシス

死刑囚

-11月20日15:40-

東京都葛飾区・・・


雄介は二谷に連れられて小菅駅を降りた。


寒い・・・


荒川からの風が吹いている。


「今朝・・・」


突然、二谷が雄介に声を掛けて来た。


「はい?」


「今朝はどこへお出かけしたんだ?」


二谷が歩きながら尋ねる。


「別に・・・ただ朝の皇居でも見ようかと思っただけっスよ」


雄介がそう答えると二谷は笑った。


「まあ・・・みんな通る道だ」


「え?」


「誰も怖くない奴なんていないさ・・・逆にそう言う奴は危ない・・・暴走しちまう」


二谷の言葉に雄介は「ふん」と言った。


「誰を思い出したか・・・誰を守りたいかは・・・知らんがその気持ちを大切にしておけ」


二谷はそう告げると笑った。


雄介も黙る。


この人は昔、単身で北朝鮮に渡ったと言う・・・


今の自分よりも、もっと怖かったんだろう・・・


もちろん雄介は今も怖い。


けど逃げると言う事は雄介の人生から逃げてしまう事になる。


そんなのは嫌だ。


俺はもう逃げない。
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