スカーレットの雪
まとまらない思考回路。どうして?今は確かに『今日』の朝。
あり得ない。そんなこと、起こるわけない。
…あたし、夢見てたのかな?
そうとしか考えられないまま、家を出た。
そう、あれは全部夢。
…奏ちゃんが死ぬなんて、悪い夢以外の何でもない。
…「おはよ、緋那」
いつもの待ち合わせ場所。奏ちゃんはいつもと同じように、あたしより先に来ていた。
あの、紺色のマフラーを巻いて。
「新しいマフラーだ」
そう言ってあたしの頭に手を乗せる。
夢と、同じように。
「緋那?」
あたしの表情を覗き込む様にして奏ちゃんが言う。
「どした?具合悪い?」
…奏ちゃん。
奏ちゃんがいる。当たり前なのに、それが当たり前じゃなくなった時の気持ちを、あたしは苦しい程に知っている。
下唇をキュッと噛んで、あたしは奏ちゃんの手を握った。奏ちゃんは少し驚いて目を丸くしたが、すぐに握り返してくれた。
「寒いな、今日」
奏ちゃんの声が、体温が、横顔が、あたしの全てを締め付ける。
…どうかあの出来事が全て、夢でありますように。