スカーレットの雪
電話を切ろうとした時、亜依が続けて言った。
『そいや緋那、今日デートじゃなかったんだね』
「え?」
一瞬、体が強ばる。
『さっき映画館の近くのお店から、奏多君一人で出てきたからさ。てっきり緋那も一緒だと思ってたんだけど…』
ドクンと、心臓が鳴った。そのまま止まってしまうんじゃないかと思うくらい、大きく跳ねる。
『緋那?』
亜依の声が遠くで聞こえた。その時にはもう、あたしは駆け出してた。
…どうして大丈夫だなんて思ったんだろう。
過去の『今日』で確かに、奏ちゃんはあたしにピンキーリングを買ってくれてたじゃない。
奏ちゃんはあたしを驚かそうとしてくれてたんだ。だったら一人でも買いに行くに決まってるじゃん。
全てスローモーションの世界だった。あたしだけがただ必死に走っていた。