スカーレットの雪
奏ちゃんはあたしに向かって叫んだ。
「…た、…るって!」
「え?」
やっぱり車が邪魔して聞こえない。
どうしよう、このままじゃ同じだ。同じことが起こってしまう。
時計を見た。もう時間はなかった。
目の端で、信号が変わるのが見える。
奏ちゃんが、車を確認した。ダメ、渡っちゃダメ。
…瞬間だった。
瞬間、頭にそれが過った。
過ったらもう、あたしの体は動いてた。
浅はかだって言われるかもしれない。でも今のあたしには、それしか考えられなかった。
…奏ちゃんが行く前に、あたしが。
「緋那っ!」
…奏ちゃんの叫び声と車の急ブレーキの音が、目を閉じたあたしの鼓膜に響いた。