スカーレットの雪
…あたしが過去に戻ってきたのは、過去を変えるためなんかじゃなかったのかもしれない。
だって過去は変えれないから。
行き着く先は、変わらないから。
あたしが望んだことは、たったひとつだった。
『奏ちゃんと、一緒にいたい』
そう、最後の、その瞬間まで。
…「…緋那」
消えそうな奏ちゃんの声が、耳に届いた。
重たい瞼を無理矢理こじ開ける。
「かな、ちゃん」
自分でも驚くくらい、かすれた声だった。
ひとつ声を出す度に、息がつまる程苦しくなる。
目の前に、あたしを抱き締めた奏ちゃんが倒れていた。過去の『今日』に見た血が、二人の下に流れている。
でもそれは、奏ちゃんのものだけではなかった。
「緋那、手…」
奏ちゃんはゆっくりと、あたしの手を取った。二人の手は、赤く染まっている。
微かに震える手で、奏ちゃんはあたしの小指にそれをはめた。
それは、赤く光るピンキーリング。
奏ちゃんにはめて欲しかった。そう願った。
過去の『今日』、あの、屋上で。