看護学校へ行こう
入学式は速やかに終了し、各一年生の親はそれぞれ帰って行った。私の両親も室蘭へ戻っていった。引っ越しは来週だ。私も新しい環境になじめるか不安なら、両親も先々のことを考えると不安なのだろう。ここに来る途中、白鳥が見えて、

「これから始まる新しい生活の門出だよ。」

とお父さんが言ったのは、自分たちへの言葉でもあったのだろう。何せ引っ越し場所は決まったものの、両親ともこれから職探しである。

 それぞれの家族が引き上げ、初めて同室のメンバーだけになる。一人の子が

「自己紹介をしようよ!」

としきってくれた。初めて一緒の部屋になったのは、まきよちゃん、うみちゃん、きしどである。しきってくれたのはまきよちゃんだった。私は名字が「中山」なので、まきよちゃんに「ちゅう」というあだ名をつけられてしまった。嫌なあだ名をつけられたなとそのときは思ったが、結局このあだ名は、20年以上たった今もなお使われ続けている。今では親しみを覚え、このあだ名で呼ばれると、とたんに若返ってしまうような気すらする。

 皆遠い地方からやってきていた。まきよちゃんは札幌だが、きしどは遠軽というところから、うみちゃんは稚内からである。北海道は広い。道外の人はぴんと来ないかもしれないが、苫小牧から稚内まで汽車で行くなら、いっそ飛行機で東京まで行った方が、はるかに短時間である。そのほか後で学校の自己紹介で知るが、おこっぺ、びふか、しべつなど、私自身初めて聞くような辺境の地からやってきていた子もいた。
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