看護学校へ行こう
 夕食の時間になり、同室の4人で食堂へ向かう。古ぼけた木製の棚に名札が貼ってあり、各自の食事が四角いアルミニウムのお盆にのせられていた。そのお盆を引き出し、テーブルに持って行くと、4人で固まって食事をし始めた。

「これ、何の魚だろうね。」

私がそう言うと、みんなわからないと言った。食べてみると、妙に脂っこくて、生臭い。それに魚をひっくり返してみると、皮が黒とピンクの縞模様である。とたんに食べる気が失せた。仕方が無く味噌汁をすすってみる。味が薄い。学生寮の食事は病院食のあまりで作られているから、患者さんとほぼ同じ食事なのだ。ただし、患者さんにつくデザートや、おかずが一品つかなかったりするから、たいそう貧相なのだ。病院食なわけだから、味付けはごく薄味につくられている。薄いと言っても味噌を節約しているんじゃないかと思うほど透き通っている。それに具が、何の草だか実だか、わからない。

「これ、ふき?」

「それにしては細いよ。」

これで味噌汁も食べる気が失せた。最後にもう一品ついているおかずに手を出す。それはおからだった。

「あ、これは食べられるね。」

結局おからでご飯を食べ終えた。もう、この日のメニューを見ただけで、これからの食生活が想像できてしまった。後に魚は私たちで「深海魚」と命名した。そんなだから、おなかは満たされなかった。
< 6 / 162 >

この作品をシェア

pagetop