蜜事中の愛してるなんて信じない
 ぎりぎり歯を食いしばる音が、脳を揺らす。

 おえ。さっき未来館で見た脳の輪切りを思い出しちゃった。

 あれを食い入るように見てたコイツって、やっぱりちょっとオカシイんじゃない?

 下から憎まれ口大王を盗み見る。

 綺麗にせり出した顎のラインに、ふいに心臓が、ぎゅん、と縮んだ。

 ぐっぐっと波立つ胸が苦しい。
 視線を逸らして、開いた扉から停車ホームの駅名を眺めるふりでごまかそうとした。

 ごまかす?
 何を?

「あっれー? まっさしじゃん。
今日研究室じゃなかったのー?」

 妙にカンに触る猫なで声。
 これでもかと巻いた茶色い髪の女が正志の腕をつかんでいた。

「ああ、ええと……あんた誰だっけ?」

 正志は、女の方を向いてしまって、表情が見えない。

 何故だろう。

 その不躾に問う、無骨な声色が何だか心地いい。

 言うなれば、ざまあみろエセギャル! ってところ。
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