かけがえのない唄
………



「こんばんはー!!Moon Lightです」




ステージにいる、幼なじみ三人のハモった挨拶に、ファン達は黄色い声をあげる。




あーこんなにもファンがいるんだね。




知っている曲が、あの頃よりも数倍上手くなっている生演奏で、流れていく。




あたしにはどの曲にも思い出がありすぎる。




きっと紅実も同じなのだろうけど、あたしには、Moon Lightの曲はやっぱりそれ以上の思い出がつまりすぎている。




赤ちゃんの頃からずっと。健ちゃんと悟はお兄ちゃんのように慕ってきたし、純は同じように成長してきた。




一緒にいる時間は兄弟よりも長かったし、相応の共通の思い出は沢山ある。




今回は選曲が、思い出がつまりすぎているものばっかりの気がするんだ。




「ヤバい、泣きそう」




周りにバレないように紅実にそっと囁いた。




「泣いてもいいよ?」




その紅実の言葉で、我慢していた涙腺は、静かに壊れた。




声に出さずにそっと。




周りににバレないように






あたしは涙を流した。





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