かけがえのない唄
「ひーなー!顔、真っ赤。純もいきなりそんなこと言うなって」



固まった空気を健ちゃんが緩ませてくれる。



「顔、冷やしてくる」




そう言ってあたしは立ち上がる。



「あ、俺もー」



純から逃げようと思ったのに。
純がついてくるなんてあり得ない。



ホントに純は空気読めないんだから。


苦情は後で言おうと決めてあたしは敢えて何も言わず、洗面所へと向かう。






「…妃菜?」



洗面所なんて鏡があるところを選ばなきゃよかった、と今更ながら後悔する。



自分の顔が真っ赤なのは完璧に見えるし…



なんてぶつぶつ思ってたらいきなり視界が真っ暗になる。




そして、暖かい体温。





「え…?何、何?純、どうしたの!?」



慌てて離れようとするのに、純の強い力には勝てなくて。




「もうちょっと。もうちょっとでいいからこうさせて?」



いつもの純の台詞とは思えないそんな事を言われたら、大人しくなってしまうあたし。



ねぇ、純。


どうしたの……?




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