かけがえのない唄
本当は圭織よりもMoon Lightのことを熱く語ることは出来る。



否、あたしはMoon Light一番のファンだ、と思ってる子よりも、熱く。



誰も知らない三人をあたしは知っているんだ。




「だーかーらー!!……やっぱり妃菜は変わってるね」




変わってるなんて、仕方ない。だって、あたしは……




「そうかな?」




なんて口からデマカセ。
あたしは卑怯だと思う。




仕方ない、と言えばそれで終わるけれど。




でも、やっぱり圭織には後ろめたい気持ちがあるんだ。



こんなにも無関心を突き通しているのに。




「で、お目当てのCDは手に入ったの?」




あたしは無理矢理話題を転換させた。



圭織はMoon Lightの話題をあたしからふってきてくれたのが嬉しいらしく、満面の笑み。




だけどそれは一瞬で。




「普通の初回限定盤はね。でも、やーぱり、シークレット特典付きは見つかんない」




そう。
圭織が追い求めているこのシークレット特典付きというものを探してあたしは散々歩かされているのだ。





「何、そのシークレット特典付きって。なんかいいものでも入ってるの?」




あたしがそう聞くとまたしても圭織のテンションは上がり、楽しそうに説明を始めた。




< 2 / 36 >

この作品をシェア

pagetop