【短編】少年と少女と美術館の龍
別れがすぐそこにいる。


時間がない。声はもう届かないだろう。


『龍』は尚も上昇を続ける。


だけど叫ぼう。声の限り叫ぼう。二度と会えないかもしれないのだから。


「さよなら、アーネル。


さよなら、愛しい人」


出来る限り手を振った。


アーネルも手を振った。


『龍』が満月に吸い寄せられていく。


影が小さくなっていく。


アーネルが遠くなっていく。


それでもルーティエは手を降り続けた。


やがて『龍』とアーネルは満月に吸い寄せられるにつれて影を失い、やがて夜闇に紛れて消えた。
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